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第15回海洋運送業雑学講座

皆さんこんにちは!

合資会社大坪組、更新担当の中西です。

 

~荷主のための“海上輸送”~

 

海上輸送はコストメリットが大きい一方、書類・容器・港湾プロセスなど特有の作法があります。本稿は、初めてでも失敗しないための実務テンプレをまとめた“荷主目線”の教科書です。


1. FCLかLCLか——まずはモード選択

  • FCL(Full Container Load):1本を占有。破損・盗難リスク低、単価も下がりやすい。一定量を超えるなら第一候補。

  • LCL(Less than Container Load):混載。小口に有利だが、貨物の扱い回数・リードタイムが増えがち。梱包と余裕日程が前提。

目安:20FTで15〜18m³以上ならFCL検討。重量貨物は重量限界も要確認。


2. インコタームズの要点(コストとリスクの分岐点)

  • EXW/FCA:引取り〜輸出通関の手配が買主側に。

  • FOB:本船渡し。海上運賃以降は買主負担。

  • CFR/CIF:運賃(+保険)込み。保険条件の確認を。

  • DAP/DDP:輸入地まで販売者手配。関税・税金の責任範囲を明確に。

社内合意は「誰が・どこで・何を」まで一行で書けること:例)“FOB上海:本船手配は売主、保険は買主”。


3. 書類の“落とし穴”回避

  • B/L(船荷証券):Original/Surrendered/Seaway Bill を使い分け。

  • VGM:コンテナ総重量の申告。計量方法・締切に注意。

  • SI(Shipping Instruction):B/L記載内容の原本。社名・住所・INCOが発票と一致しているか要チェック。

  • Invoice & Packing List:HSコード、原産地、数量・重量・容積の整合を。

  • 原産地証明・各種証明:輸入国要件を事前確認。


4. コンテナの種類と選び方(用途別の“定番”)

  • Dry(20/40/40HC):一般貨物。HCは高さが取りやすい。

  • Reefer:温度管理(冷凍・冷蔵)。設定温度・許容変動・積載率のバランスが鍵。

  • Open Top:上積みOK。背高貨物・天井クレーン積みに。

  • Flat Rack:幅・高さ超過の重量物に。固縛計画が命。

  • Tank:液体化学品・食品。残洗基準やバルブ仕様を事前確認。

選定時は寸法・重量・固定点(ラッシングリング)を図面化。Reeferは設定温度・除湿・換気の条件書を必ず添付。


5. 梱包・固縛・防湿:海上特有のリスク対策

  • 梱包:角当たり防止(コーナーパッド)、点荷重→面圧化(ハニカム/合板)。

  • 固縛:ベルト交差掛け+木材ダンネージ。長手方向の空隙は必ずブレーキ。

  • 防湿:乾燥剤・ベーパーライナー。金属部材は防錆紙で包む。

  • 重量物:床面耐荷重(kg/㎡)と重心を確認。Flat/OTはチェーンターンバックルで回転抑止。


6. 危険物・リーファーの追加ルール

  • 危険物(IMDG系):等級・UN番号・パッキンググループ・ラベル・書類。港湾受入の可否船社制限を二重確認。

  • リーファー事前予冷、温度ロガー、ドア開放最小化。温度逸脱時の連絡体制と“受入時測温”をルール化。


7. 費用の読み方:見積の“行間”を読む

  • 海上運賃(BASIS)サーチャージ(例:燃料・通貨・セキュリティ等)

  • 港費:THC、D/O、CFS(LCL)、書類費用

  • 内陸費:トラック/鉄道、待機料

  • 滞船・滞箱(D&D)フリータイムと超過単価は最重要

  • 保険:条件・免責・対象/不担保を確認

同じ総額でもフリータイム・条件次第で実コストが変わります。総額だけでなく条件表で比較しましょう。


8. 典型トラブルと“前倒し”回避策

  • ロールオーバー(船に積まれない)→ ブッキング確定の締切順守、スペース確保の契約。

  • ドキュメント不一致 → 発票・PL・SIの三点突合を標準化。

  • D&D膨張 → 通関・配送の事前予約、遅延時のフリー延長交渉

  • 破損・結露 → 梱包・固縛・防湿を写真+チェックリストで標準化。

  • 温度逸脱 → リーファーはロガーと受入測温を必須に。


9. 予約から引渡しまで

  1. 需要確定(数量・納期・INCO)

  2. 見積&条件表比較(フリータイム/サーチャージ/支払条件)

  3. ブッキング(スペース確保・VGM/カット日確認)

  4. 梱包・固縛・防湿(写真ルール)

  5. 通関・搬入(CY/CFS、カット順守)

  6. 出港(B/L発行:オリジナルorサレンダー)

  7. 輸入地手配(通関・配送予約・フリー管理)

  8. 到着・引取(ダメコン・数量検品・温度/外観確認)

  9. 請求・原価確定(D&D精算、保険対応)


10. KPIダッシュボード例(荷主向け)

  • 納期遵守率(OTIF)、総リードタイム、遅延原因の構成比

  • 1TEUあたり総コスト(海上+港費+内陸+D&D)

  • D&D発生率と平均金額、フリー消化率

  • 破損・温度逸脱率、保険クレーム率

  • CO₂排出推計(サプライヤ評価にも活用)


海上輸送は、容器(コンテナ)選定→書類→梱包/固縛→港湾手配の順に“前倒し”で組めば安定します。費用は条件表で、リスクは**標準化(写真・チェック)**でコントロールしましょう。

 

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