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皆さんこんにちは!
合資会社大坪組、更新担当の中西です。
~荷主のための“海上輸送”~
海上輸送はコストメリットが大きい一方、書類・容器・港湾プロセスなど特有の作法があります。本稿は、初めてでも失敗しないための実務テンプレをまとめた“荷主目線”の教科書です。
FCL(Full Container Load):1本を占有。破損・盗難リスク低、単価も下がりやすい。一定量を超えるなら第一候補。
LCL(Less than Container Load):混載。小口に有利だが、貨物の扱い回数・リードタイムが増えがち。梱包と余裕日程が前提。
目安:20FTで15〜18m³以上ならFCL検討。重量貨物は重量限界も要確認。
EXW/FCA:引取り〜輸出通関の手配が買主側に。
FOB:本船渡し。海上運賃以降は買主負担。
CFR/CIF:運賃(+保険)込み。保険条件の確認を。
DAP/DDP:輸入地まで販売者手配。関税・税金の責任範囲を明確に。
社内合意は「誰が・どこで・何を」まで一行で書けること:例)“FOB上海:本船手配は売主、保険は買主”。
B/L(船荷証券):Original/Surrendered/Seaway Bill を使い分け。
VGM:コンテナ総重量の申告。計量方法・締切に注意。
SI(Shipping Instruction):B/L記載内容の原本。社名・住所・INCOが発票と一致しているか要チェック。
Invoice & Packing List:HSコード、原産地、数量・重量・容積の整合を。
原産地証明・各種証明:輸入国要件を事前確認。
Dry(20/40/40HC):一般貨物。HCは高さが取りやすい。
Reefer:温度管理(冷凍・冷蔵)。設定温度・許容変動・積載率のバランスが鍵。
Open Top:上積みOK。背高貨物・天井クレーン積みに。
Flat Rack:幅・高さ超過の重量物に。固縛計画が命。
Tank:液体化学品・食品。残洗基準やバルブ仕様を事前確認。
選定時は寸法・重量・固定点(ラッシングリング)を図面化。Reeferは設定温度・除湿・換気の条件書を必ず添付。
梱包:角当たり防止(コーナーパッド)、点荷重→面圧化(ハニカム/合板)。
固縛:ベルト交差掛け+木材ダンネージ。長手方向の空隙は必ずブレーキ。
防湿:乾燥剤・ベーパーライナー。金属部材は防錆紙で包む。
重量物:床面耐荷重(kg/㎡)と重心を確認。Flat/OTはチェーンやターンバックルで回転抑止。
危険物(IMDG系):等級・UN番号・パッキンググループ・ラベル・書類。港湾受入の可否と船社制限を二重確認。
リーファー:事前予冷、温度ロガー、ドア開放最小化。温度逸脱時の連絡体制と“受入時測温”をルール化。
海上運賃(BASIS)+サーチャージ(例:燃料・通貨・セキュリティ等)
港費:THC、D/O、CFS(LCL)、書類費用
内陸費:トラック/鉄道、待機料
滞船・滞箱(D&D):フリータイムと超過単価は最重要
保険:条件・免責・対象/不担保を確認
同じ総額でもフリータイム・条件次第で実コストが変わります。総額だけでなく条件表で比較しましょう。
ロールオーバー(船に積まれない)→ ブッキング確定の締切順守、スペース確保の契約。
ドキュメント不一致 → 発票・PL・SIの三点突合を標準化。
D&D膨張 → 通関・配送の事前予約、遅延時のフリー延長交渉。
破損・結露 → 梱包・固縛・防湿を写真+チェックリストで標準化。
温度逸脱 → リーファーはロガーと受入測温を必須に。
需要確定(数量・納期・INCO)
見積&条件表比較(フリータイム/サーチャージ/支払条件)
ブッキング(スペース確保・VGM/カット日確認)
梱包・固縛・防湿(写真ルール)
通関・搬入(CY/CFS、カット順守)
出港(B/L発行:オリジナルorサレンダー)
輸入地手配(通関・配送予約・フリー管理)
到着・引取(ダメコン・数量検品・温度/外観確認)
請求・原価確定(D&D精算、保険対応)
納期遵守率(OTIF)、総リードタイム、遅延原因の構成比
1TEUあたり総コスト(海上+港費+内陸+D&D)
D&D発生率と平均金額、フリー消化率
破損・温度逸脱率、保険クレーム率
CO₂排出推計(サプライヤ評価にも活用)
海上輸送は、容器(コンテナ)選定→書類→梱包/固縛→港湾手配の順に“前倒し”で組めば安定します。費用は条件表で、リスクは**標準化(写真・チェック)**でコントロールしましょう。
皆さんこんにちは!
合資会社大坪組、更新担当の中西です。
~強い海運~
世界の物流は海が運びます。だからこそ海運には、コスト競争力と環境性能、そしてスケジュール安定の三立が求められます。本稿は、現場で効く「脱炭素と運航最適化」を、燃料・運航・データ・港湾協業の4レイヤーに分けて“実装の順番”まで落とし込んだガイドです。
脱炭素はイメージではなく燃費=コストの話。優先順位は次の通りです。
効率改善(OPEX小・即効性大)
スピードマネジメント(最適速力・スロースチーミング)
船底/プロペラの定期清掃・研磨
トリム最適化・ウェザールーティング
JIT(ジャストインタイム)入港による待機燃料の削減
燃料転換(中期投資)
ドロップイン系:バイオ燃料(混焼で導入容易)
新燃料:LNG、メタノール、アンモニア等(設計・供給網が前提)
設計・装置(CAPEX大・長期)
風力補助(ローターセイル等)、空気潤滑、廃熱回収
新船・改造(燃料仕様、電装・配管刷新)
まずは運航効率で“今ある船”の燃費底上げ → 次に燃料 → 最後に設計。この順に進めると投資効率が高まります。
“速度一定”から“到着時刻一定”へ。
天候・潮流・バース空き状況に合わせ、到着時刻を厳守しつつ燃料極小化を目指す。
船底・プロペラの汚損度をKPI化(燃費悪化率で可視化)。
研磨・洗浄は航路・水温・寄港地に合わせた最適周期で。
積付計画と連動し、波浪・喫水制限を踏まえたトリム設定を標準化。
デッキ上の風圧・波当たりも考慮し、航海中に微調整。
風・波・海流予測を踏まえたウェザールーティングで、燃費と安全余裕を同時確保。
データ粒度:Noon Report(1日1回)から、エンジン・燃料・環境センサの高頻度化へ。
KPI例:
gCO₂/トン・海里、燃費(t/day, t/round)
時間チャーター等価(TCE)、オンタイム率、寄港“窓”遵守率
船底・プロペラ汚損指標、待機時間(沖待ち/岸壁待ちの内訳)
可視化→標準化→例外対応の順で、現場に“効く”運用へ。ダッシュボードは「船・航路・港」の3軸で切ると原因が見えます。
遅れの連鎖を防ぐ要は港での予見性。スロット/窓の見直し、JIT入港の情報連携を。
接岸→荷役→出港の標準作業時間を再設計。
書類・承認プロセスを事前電子化し、岸壁滞在を短縮。
フィーダー・鉄道・トラックの連携で集疎効率を平準化。
コンテナデポの滞留日数をKPI化し、回転率を改善。
バイオ燃料:即導入可、既存主機で混焼。供給と価格が鍵。
LNG:SOx/NOx低減、インフラ前提。メタンスリップ対策が論点。
メタノール:取り扱い容易、エンジン対応が進む。燃費密度は要注意。
アンモニア:将来の有力候補。毒性と燃焼特性に留意、港湾側の準備が必要。
陸電(SSE/OPS):停泊時の排出と騒音を抑制。港の設備状況で評価。
結論:単一解はない。航路・船型・寄港地のインフラを軸に複線で進めるのが現実解。
CAPEXは燃費改善OPEXで何年回収かを明確化。
燃料プレミアム(グリーン燃料の割高分)は、荷主と共有するスキームを早期に整備。
長期契約(COA等)では燃料条項・環境付加価値の扱いを事前に合意。
速力・ETA基準を“到着一定”に切替
船底・プロペラ清掃の閾値と周期を規定
トリム・ドラフトの標準設定表を整備
ウェザールーティングの採否基準(波高・風・回避率)
JIT入港の情報連携(ETA/バース/荷役窓)
KPIダッシュボード(船×航路×港)を週次レビュー
燃料ポートフォリオ(ドロップイン→新燃料)計画
CAPEX回収年数・燃料条項・グリーン価値の契約整備
効率→燃料→設計→協業の順に打ち、KPIで回す。
海運の競争力は、日々の速力と到着、そして岸壁の一時間に宿ります。小さな改善を回し続ける会社が、コストでも環境でも勝ちます。